出生前診断については様々な議論があります。
いくら医学が進歩しても、出産や子育てに不安を覚える親が減るわけではありません。私たち夫婦も双子を授かったときに出生前診断について悩みました。当時、いろんな診断を受けているうちに妻は切迫早産で入院となり、出生前診断についてそれ以上気をかけることは無くなりました。双子が生まれた後は長期入院、産後うつ。退院後は双子育児に追われ本当に大変な日々が続き、じっくり当時を振り返る機会もないまま今日に至りました。
育児の大変さもピークを過ぎ、双子育児に関するブログを始めようと思い立って、ようやく当時の不安な気持ちを振り返ることができました。いま、出生前診断について葛藤がある方にとって、少しでも参考にしていただけたらとの思いから、この記事を書きました。
自分たちの当時の不安な気持ちを振り返ってみて、一つだけアドバイスのようなことを言わしていただけるなら、出生前診断については決して人任せにせず(医者任せもダメ!)、自分たちで最終判断をして欲しい、ということです。その判断材料を集める過程で、理系の知識、特に確率や医学について少しだけ知識が必要になってくるはずです。逃げずにしっかりとリサーチし、勉強や聞き込みをしてください。スピリチュアル方面へ頼りたくなる気持ちは否定しません(自分も最後は神頼みでした)が、『気持ちの支えとして』の神頼みしてください。最終判断は医学的根拠と自分たちの倫理観で行って欲しいと思います。
注:2012年の記録になりますので現在の出生前診断とは内容が異なる可能性がありますのでご留意ください。
出生前診断を受けた理由
20代で海外ボランティアに参加しました。
多産の発展途上国で、障害を抱えた子供たちも多く見かけました。現地で”障害者”を指す単語は、モノや動物と同じグループの単語です。”人としての扱いを受けられない”そのような場面を何度も目にしました。
障害を持って生きていくことは本当に厳しいことです。平和な日本でも厳しいことですが、災害や戦争となればなおさらのことでしょう。子供を産み育てるということは、親がその子の人生に責任を持つことに他なりません。私たち夫婦が双子を授かったとき、出生前診断を受けるかどうかついて、悩み葛藤しました。夫婦それぞれの死生観や幸福について、これからの世界、多様性、戦争と平和、自分たちが死んだ後の事、、、きれいごとや理想だけでは済まされない、突っ込んだ話し合いをしました。
そして、双子の一人ひとりの人生のために、出生前診断を受けることを決めました。悪い結果なら出産へは進まない事、その先二度と子供は作らない事も同時に決めました。倫理的な抵抗は強く感じましたし、当時の判断が良かったのか今でも分かりません。
ただ言えることは、
「夫婦二人とも双子の人生に責任を持ちたかった」
「その時にできるベストを尽くしたかった」
ということです。
3つの選択肢
2012年、当時の私たちには以下の3つの選択肢がありました。
- クアトロテスト(母体の血液検査)
妊婦さんから採血した血液中の4つの成分を測定して、赤ちゃんがダウン症候群、18トリソミー、開放性神経管奇形である確率を算出するスクリーニング検査です。
参考)クアトロテスト
- 羊水検査
羊水中には胎児の細胞が含まれています。この羊水を採取することにより、胎児の染色体や遺伝子を調べることができます。染色体の変化(染色体異常)があるかどうかを調べるための確定診断検査として実施されます
参考)羊水検査
- 胎児ドック
胎児ドックは出生前診断のうち、非確定的検査に分類されており、超音波機器を使用した検査です。
超音波検査は妊婦健診で赤ちゃんの様子を確認する「通常超音波検査」とは異なり、「胎児超音波検査」と呼ばれ、お腹の赤ちゃんの形態や発育状態を詳細に観察し、赤ちゃんの病気の可能性について調べます。
参考)胎児ドック
赤ちゃんに染色体異常があるかどうか、確定診断を受けるには羊水検査が必要です。ただし、お腹に針を刺して羊水を採取する検査であり、約1/300(1000人に3人)の流産リスクがあるといわれています。
我々夫婦は羊水検査前のスクリーニングとして、クアトロテストと胎児ドックをまず受けることにしました。
胎児ドック
大阪のクリフムクリニックで胎児ドックを受診しました。
明るい女医先生とお話ししながらテキパキと検査を受けました。双子のうち1人の体の向きが診やすい方向を向いてくれず、長い待ち時間もありましたが、大きな問題はなく終了。NT(うなじ付近のむくみ)、顔、内臓、心臓、大腿骨等、エコー上の所見は何も無し。14週に入っていたので初期ドック(13週まで)としての正式なレポートではないが、2人とも「異常なし」との心強い診断をいただきました。
クアトロテスト
かかりつけのクリニックにて、女性カウンセラーより事前カウンセリングを受けました。以下の内容を説明していただきました。
- 双子の場合、クアトロテストの結果はあまり当てにならない。
なぜなら、クアトロテストは母体の採血で胎児の異常有無を判断するものなので、健常児と異常児の数値が互いに相殺して分からない場合があるから、とのこと
- 胎児ドックで「異常なし」との結果がでているなら、そっちの方が信用できる
- 羊水検査前のスクリーニングとしては、胎児ドックの結果で十分ではないか?
(羊水検査には進む必要はない、との意見)
- クアトロテストのカットオフ値(約1/300)と羊水検査(針を刺すことによる流産のリスク約1/300)との関係
カットオフ値とは、その数値より高ければ”異常がありそうだ”、数値より低ければ”異常はなさそうだ”と判断する境界です。
つまり、クアトロテストで陽性(カットオフ値以上)であれば、羊水検査に進むこと(流産のリスク約1/300を冒してでも異常の有無を確かめること)は妥当だ、ということ
反対に、クアトロテストで陰性(カットオフ値以下)であれば、羊水検査に進むこと(流産のリスク約1/300を冒してまで異常の有無を確かめること)は必要はなさそうだ、ということ
参考)カットオフ値
羊水検査
女性カウンセラーの説明を聞いた後も、妻は
「羊水検査(確定検査)までしっかり受けたい」
という気持は変わっていませんでした。
私は、スクリーニング(胎児ドック)で「異常なし」と太鼓判をもらった以上、羊水検査(1/300、双子なので1/150の流産確率)に挑むのは合理的じゃないと説得。
結果的に妻が折れる形で、羊水検査は受けないこととしました。ただし、妻の心配は完全に解消されてなかったので、クリフムクリニックの中期ドックを受診することにしました。
後日、中期ドックを受診し、結果は「異常なし」。
後期ドックも受診するよう勧められ、自分たちもそのつもりでましたが、すぐに切迫早産による管理入院となってしまったので受診できませんでした。
終わりに
その後、妻は切迫早産で入院となりましたので、出生前診断についてそれ以上気をかけることは無くなりました。双子が生まれた後は長期入院、産後うつ。退院後は大変な双子育児に追われる日々が始まり、じっくり当時を振り返る機会もないまま今日に至りました。
育児の大変さもピークを過ぎ、双子育児に関するブログを始めるにあたって、ようやく当時の不安な気持ちを振り返ることができました。
8年も経って出生前診断の方法も進化を続けていますが、子供を思う親の気持ちは何も変わっていないと思います。一つだけアドバイスのようなことを言わしていただけるなら、出生前診断については決して人任せにせず(医者任せもダメ!)、自分たちで最終判断をして欲しい、ということです。
その判断材料を集める過程で、理系の知識、特に確率や医学について少しだけ知識が必要になってくるはずです。逃げずにしっかりとリサーチし、勉強や聞き込みをしてください。スピリチュアル方面へ頼りたくなる気持ちは否定しません(自分も最後は神頼みでした)が、『気持ちの支えとして』の神頼みしてください。
最終判断は医学的根拠と自分たちの倫理観で行って欲しいと思います。